大阪市長 關淳一 殿
N
弁明書
このたび、大阪市が私たちの暮らすテント・小屋がけに対して撤去を求めていますが、今の状況の下ではテントの撤去も私たちの立ち退きも選ぶことができません。
強制排除により、何人かの仲間は行き場(生き場)を失い路頭に迷うことになります。引っ越し先を探しておりますが、大阪市としてテント・小屋の新規設置を厳しく規制していることもあり、はなはだ困難です。真冬のこの時期の強制排除は路上死に直結しかねない、著しい人権侵害です。
大阪市としては、シェルターや自立支援センター、高齢野宿者には生活保護をということで「対策メニュー」を用意していると主張しています。しかし、そのいずれも選択することのできない仲間がいる現実は「対策メニュー」の不十分さを物語っています。また、「対策を受け入れるか、さもなくば強制排除」「野宿者の生活・人権よりも管理の適正化」という大阪市に対する抗議の意思表示としてとどまっている仲間もいます。「自立支援」の押しつけのもと、「対策に乗らないものは行政は面倒をみない」というのは私たちにとっては「死んでもかまわない」と宣告されていることと同じです。世間から見ても、「わがままな野宿者だから仕方がない」という見方が広がることを懸念します。野宿者の死を容認するような社会はと
ても危険な社会だと思います。
私たちは、現住する場所に固執して強制排除に反対するわけではありません。他に生きていける場所=代替地の提示を求めているのです。公園工事にはこれまでも公園事務所と話し合いの上で、可能な限り協力してきたという経緯もあります。
しかしながら、この半年、公園事務所と私たちの間では「話し合い」は存在しませんでした。「工事に協力してほしい」というのみで、替わりに生きていける場所を求めると「代替地は認めない」「一切妥協しない」と木で鼻をくくったような答えが返ってくるだけでした。
10人ほどの仲間が「説得に応じて自主退去した」と報道されていますが、これも事実と違う部分があると思います。それぞれの当事者が納得して移動したのは間違いないと思いますが、実際は「強制排除という圧力のもとで、否応なく立ち退いた」というのが真相だと思います。いまは、みんなの幸福を願うのみです。
いま、労働者の雇用と生活が不安定・低収入に追いやられワーキングプアとも呼ばれる労働者層が拡大しています。とりわけ若い労働者の「日雇い派遣」「ワンコールワーカー」は現代の日雇い労働者と呼べる存在であり、深夜営業のインターネットカフェや漫画喫茶で「居住」する若者は「ホームレス状態」であると言えます。野宿者と貧困労働者の垣根はますます低くなっています。労働者切捨ての帰結として野宿・野垂れ死にがあり、強制排除という行政による労働者保護の責任放棄、死刑宣告にも等しい行為は、労働者棄民化の象徴的な事件であると言えます。
野宿者の強制排除は全労働者に対する弾圧であると考えます。
最後に、大阪市というよりも公園事務所職員のみなさま一人ひとりに申し上げたいことは、昨年の強制排除当日の現場で私たちがもっとも悔しい思いをしたのは、相対する市職員やガードマンたち(解体したテントや荷物を運搬車両に積み込んだのは、日雇い派遣で集められたフリーターだった)は、本来であればともに闘うべき仲間であるのに、ということです。労働者同士が殺し合いをさせられるという状況に対し、みなさまとともに何かを為していきたいと思っています。
以上