2007/01/19

法学者・弁護士・司法書士の抗議・要望書

法学者・弁護士・司法書士の方々が、連名で大阪市あてに抗議・要望書を提出なさったとのことです。ありがとうございました。
以下に、文章を掲載させていただきます。
他にも抗議・要望などされた方で、こちらのブログに掲載可能なものがありましたら、メールでお知らせください。
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抗議・要望書
大阪市長 關 淳一 殿

                          2007年1月19日

              賛 同 者 一 同

私どもは全国各地において路上法律相談等を通じて、野宿を余儀なくされ、あるいは生活困窮のために安定した住居を喪失する危機に瀕する人たちへの支援・相談活動を行っている弁護士・司法書士をはじめとする法律家・法律実務家です。
今般、貴市内長居公園においてテント・小屋を立てて生活している人たちを対象として、貴市が強制立ち退きへの手続に着手していることにつき、強く抗議するとともに強制立ち退きへの手続を直ちに中止されますよう要望いたします。
昨年1月私どもをはじめとする法律家有志一同は、貴市内靱公園及び大阪城公園でテント・小屋を建てて生活している人々に対する強制立退きについて憂慮の念を示すとともに直ちに強制立退きへの手続きを中止するよう要望し、大阪弁護士会も同旨の会長声明を発表いたしました。さらに全国各地から様々な抗議・要請があったにもかかわらず、同月30日行政代執行は強行され、これに対しては多くの市民・支援団体から貴市に対して抗議が出され当事者は違法な強制立ち退きに対して国家賠償を求める訴訟を提起しているところです。
さらに、私どもをはじめとする法律家一同は、同年4月貴市天王寺公園事務所が貴市内日本橋公園をはじめとする公園内で野宿する人々から恫喝的に「テント撤去の誓約書」なるものを取り付ける等の違法行為をしたことについて、直ちにこれをやめるよう申入れ、当事者は人権救済申立てを行いました。その際にも貴市はこうした申入れ・人権救済申立てを全く顧みることなく同年5月、最低限の公物管理法・手続法すら遵守せず日本橋公園で野宿を余儀なくされた人々を強制的に追いたて荷物を強奪・廃棄するという挙に出てこられました。これに対しても私ども以外にも、多くの市民・諸団体から抗議の声が寄せられ、当事者も訴訟を提起いたしました。
そのような最中、貴市がまたも多くの抗議の声を無視し全国各地でさまざまなかたちで「ホームレス自立支援」に取り組む人々をあざ笑うかのごとく、違法な強制立ち退きに踏み出しておられることは大変残念な限りです。
長居公園で野宿を余儀なくされている人々は、貴市をはじめとする行政の対貧困施策の貧弱さゆえに野宿に追いやられ、文字通り生き残るためにやむなく公園内にテント・小屋を立てて自己の尊厳を保ちうる最低限度の生活を営んでいるに過ぎません。そして長居公園の人たちが公園の「適正な利用を妨げ」ている事実は全く存在しないどころか、むしろ農園を借りて野菜を耕作し地域の人たちに販売したり、「大輪まつり」(夏祭り)といった開かれたイベントを開催する等、日頃から地域とも良好な関係を築き、地域と共に生きるあり方を模索しつづけています。彼らの生活を、そうした貴重な試みもろとも踏みにじり、再度路上へ放り出すようなことは到底容認することはできません。
公園で生活している人は、そこを追い立てられてしまったらどこに住めというのでしょうか?人は最低限安全・安心に寝起きする場所がなければ、生きていくことは不可能です。
適切な代替措置なく単に暴力的に追い立てる貴市のやり方は野宿を余儀なくされた人たちへの抹殺行為であるといっても過言ではありません。
昨年来私どもが繰り返し指摘しているとおり、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(以下たんに「特措法」という)第11条は「都市公園その他の公共の用に供する施設を管理する者は、当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする。」と定めており、「必要な措置をとる」ためには(1)「当該施設」の「適正な利用が妨げられている」こと、(2)「ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図」ること、(3)「法令の規定に基づ」くことを少なくとも要件として定めていると解され、今回の長居公園の人たちへの追い立ても、そのいずれの要件をも満たしておりません。また「特措法」制定にあたっての衆議院厚生労働委員会の付帯決議は、「特措法」11条の「必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に十分に配慮すること」としているところ、これまで貴市が一顧だにしてこられなかったのと同様、人権に関する国際約束たる国際人権規約をはじめ上位法たる憲法、憲法98条2項により誠実遵守義務の課せられている条約及び国際法規、生活保護法などの諸法令を遵守しようとする姿勢は残念ながら見ることができません。
一方で、長居公園に住む人たちは、2007年1月10日付弁明書においてそれぞれ、「私たちは、現住する場所に固執して強制排除に反対するわけではありません。他に生きていける場所=代替地の提示を求めているのです。公園工事にはこれまでも公園事務所と話し合いの上で、可能な限り協力してきたという経緯もあります」(Nさん)「過去に遡りオリンピック誘致、ワールドカップ前夜と、長居公園のホームレスが暮らすテントが撤去される段には、必ず説明会がなされてきました。その都度、話し合いでもって互いに譲歩し頼まれごとは引き受けてきたものです。」(Kさん)としているとおり、話し合いには応じる姿勢を示しています。「私たちは整備工事自体に協力する意志はあります。だからこそ,今回の工事の話がなされたときにも,テントを建設できる代替地を求めてきました。」「私たちの生活は今のテント村なしには成り立たないからです。なぜ公園事務所は,テント村を長居公園内の他の場所に移転させることを認めてくれないのでしょうか。スタジアム周辺で露宿を余儀なくされている人たちも退去が強要されていることも考えると,大阪市は長居公園から野宿者を一掃しようと急いでいるとしか思えません。なぜそんなに急いで野宿者を排除しようとするのですか。国際的イベントが開催される長居公園に野宿者が生活していることが,大阪市 としてそんなに恥ずかしいですか。」「雑多な人間が集う私たちのテント村が,そんなに見苦しいですか。」(Sさんの「弁明書」より)
このテント住民の問いかけに対してことばをもってこたえることなく暴力で報いるようなことは絶対に許されてはなりません。
直ちに長居公園に対する強制立ち退きの手続を中止してください。
長居公園に住む人たちとの真摯な話し合いの中から受け入れ可能な解決策を見出すようにしてください。
法を遵守し、目の前に拡がっている貧困の現状に対して責任ある施策を示し、実行してください。以上、心より要望いたします。


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posted by kamapat at 12:34 | 長居公園代執行