(以下)
前日12日の午後3時ごろ、鶴見橋の店で警察を呼ばれ、西成署に連れて行かれた労働者が暴行された経緯は、釜合労がメールやビラで知らせていた通り、以下のようなもの。
当事者となった労働者は、無銭飲食などではなく、つっけんどんな客扱いに不満を言っただけのことだった。
で、連れて行かれた西成署の3階の個室で、4人の刑事に代わる代わる顔を殴られ、紐で首を締められ、足蹴りされ、挙句の果てに両足持たれて逆さ釣りにされた。
気が遠くなると、スプレーをかけられたと言う。
生活保護を打ち切ると脅かされて、その店に近づかないという始末書まで書かされている。
その抗議行動が、13日の夕方5時半から、いつものように、西成署正門前に街宣車を置いて始められていた。
ぼくはたまたま大国町に行かねばならない用事があり、それを見ながら通り過ぎていたのだが、打ち合わせが終わった帰りの午後8時半ごろ、出城の交差点過ぎて、南海線のガードに近づくと、機動隊が1個小隊、整列して待機しているのに出くわし、まだやってるのかと思って現場に行くと、300人は下らない労働者が西成署を取り囲んでいる所だった。
街宣による抗議は7時半くらいにいったん終り、いつもなら抗議が終わったら自然に人も引いて行くのだが、今回は激しくなるばかり。
それで、ひょっとして誰か持って行かれたんやないかと思い、知った面々をつかまえて聞いてみると、それはなかった。
抗議していた面々や、暴行を受けた当事者の人とも会い、殴られて腫れ上がった顔や、縄で締められた跡が生々しい首などを見せてくれた。
警察の取り調べで紐で首を締めるか?普通。
付き添って行った人の話だと、病院の医師も「これはやりすぎや」と言っていたという。
そうした話を聞いている最中にも、「オレもやられた」と話に割り込んでくる人がたくさんいるのもいつも通り。
「あんた、よく言ってくれた」と涙を流している労働者もいる。
西成署に「覚え」のある人は、いたるところに居る。
でも、9時をまわってこの騒ぎはさすがに異常に感じられた。
言っておくが、街宣車の拡声器を使った抗議は、その時間には終わっており、誰も扇動などもしていない。
11時ごろ、稲垣さんがマイクを使ったが、それは、労働者同士で起きたケンカを諌めるためだった。
ぼくが着く少し前、正門から若い警官が出てきて、横柄な口をきいたあげくに何人かを殴ったらしく、それで収まらなくなったとも言う。
それは、どうやら労働者の対応に慣れない新任の警官だったらしい。
すでに署の外に警官の姿はなく、塀の内には投げ込まれたいろんなモノが散乱。
付近の路上も惨憺たる有様。
相変わらずの西成署のアホな対応にはあきれるばかり。
騒ぎを大きくしているのはヤツらなのである。
やがて焦点は閉じられた正門から北門に移り、門をぶち破ろうとする人垣が大きく波打ってる。
ステンレスの頑丈な門戸はそう簡単には破れないし、向こう側には車を置いてつっかえにしているが、シュプレヒコールがあがり、諦めない。
一時、白い煙が舞い上がって路上を覆ったので、催涙弾でも撃たれたのかと思ってタオルを口に巻いたが、誰かが投げた消火器が破裂したらしい。
繰り返す怒声とときの声。
ガラスの割れる音。
投げられる自転車。
味方が投げたワンカップが頭に当たったりしてる人はいたが、幸い、こちら側に怪我人は出ていないようだ。
やがて南海線のガード側から待機していた機動隊が近づき、一気に緊張が高まったが、いかんせん人数が少なく、こちらを威圧するつもりはハナからないと分かると、勢いづいた労働者が、門から署内に入ろうとする機動隊に逆に襲いかかり、門のところで乱闘が繰り広げられた。
ぶちのめした隊員からジュラルミンの盾やヘルメットを奪って走る若い労働者たちもいる。
その門が開いた時の乱闘で、若い機動隊員が倒れた。
そいつを「重傷や」と言って、目の前を運んで行ったのは、こちら側のEとK。
完全に意識不明で、放っておくとリンチになりかねないので、助け出したのだ。
彼らは正門付近に固まっていた仲間の機動隊員に話し掛け、そいつを中に入れて「敵に塩を送る」と、悠々と引き揚げてくる。
中に入った機動隊は、隊列を組みなおして、一度外に出ようとしたが、ワンカップの集中攻撃を浴びて、あえなく引き下がった。
この日はG8サミットの財務省会議の初日。
機動隊の主力はおそらくそちらの警備に出払っているのだろう。
30人くらいではどうにもならない。
労働者は状況をよく知っているし、「訓練不足のヤツラを回してきやがった」とうそぶく人もいる。
それを思うと、なんでわざわざこんなタイミングに、こんな騒ぎを起こすのか。
全く西成書の愚かさに、あきれるばかりである。
こうなる前に、署長なり誰か出てきて、素直に謝ればよいのである。
久々というか、ここ数年の西成の騒ぎの中では、空前の怒りが燃え上がっているように感じられた。
それに、釜でもだんだんと目立たなくなっていた若い労働者が物凄く元気だったのも印象に残った。
ウチは、現場から自転車で15分くらいのところなので、日付が変っても、ヘリが飛ぶ音が聞こえていた。
深夜のNHKのローカルニュースによると、警官4人が怪我、逮捕者は7人。
いずれも公務執行妨害か、建造物不法侵入。
原因については、飲食店でトラブルを起こした労働者が取調べを受けたことをきっかけに、地域の労働組合が呼びかけて騒ぎが始まったとし、労働者が警官に暴行を受けたことはひと言も言っていなかった。
以下は当日のうちに、とりあえず検索してみた記事。
記事を読んで、何がなんだかよく判らないのは当たり前で、こちらも報道管制が敷かれていることは確か。各社の記事とも原因については何も判らないばかりか、労働者側が一方的に騒ぎ起こした印象を与えるものとなっている。
朝日が比較的正確だが、やはり警察が暴行の事実を認めていないとそのまま書いている。
産経
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080613/crm0806132318046-n1.htm
読売
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080614-OYT1T00082.htm
朝日
http://www.asahi.com/national/update/0614/OSK200806130096.html
労働者の方も11時を回ると、さすがにドヤの門限に合わせて引くだろうし、最終的には動員された機動隊は100人を超えたようで、数で圧倒していったようだ。
サミットで忙しいのにご苦労さまなことだ。
それに、意識不明となった若い機動隊員は、少なくとも発表にある「軽傷」とは思えなかった。
メットと盾を奪われ、「ヤラれた」と言えないのも機動隊の「メンツ」なのかどうか。
そうだとしたら、それもくだらない。
もちろん、ぼくも自転車は投げない方がいいと思う。
当たったらイタいし、投げられてスクラップになる自転車もカワイソウ。なにより、それで生活費稼いでいる人にとっては大きな痛手だ(主に西成署北側の塀に沿って止めてあった自転車が投げられたり、バリケードがわりにされた)。
でもね、何でここまでみんなが怒るのか、ということに目を向けないと、問題は永遠にどうどうめぐりなんだろう。
何でみんな、1人の仲間が受けた仕打ちを自分のことのように怒れるのか、それだけ「覚え」がある人が多いことに他ならないということだから。
ところが、それを「13日の金曜日」に引っ掛けて、「また暴動だ」「暗黒再び」などと面白おかしくはやし立てるだけでなく、「騒ぎ」は常に「西成」の「労働者」から起きる=アブナイ街「西成」というステレオタイプに人を導く言説には、タテマエやメンツで平気でウソをつく警察へのそれと同じくらいの怒りをぼくは感じている。
しかし、多分事後弾圧はあるはずで、持ってゆかれた人の救援もさることながら、これから逮捕されるかも知れない人のことも考えておく必要があるとは思う。
(以上)