2007/01/12

長居公園強制排除手続き開始に対する大阪市への抗議書

一月五日に大阪市に提出したという抗議書だそうです。掲載の許可をいただきましたので、以下に転載します。
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本日、長居公園に居住する野宿生活者のテント村に対し、「弁明の機会付与の 通知書」が配布され、行政代執行手続きが開始されたと聞きました。
この厳寒の時期に生活の基盤たる寝食の場所を奪われることが何を意味するか は明白です。毎年、この豊かな国の大阪という都会で、200もの命が路上で 失われている事実があります。
行政代執行は都市公園法に基づく「不法占有物件」に対して行われるものですが、そこにはその「物件」に現に人が居住しているという事実が意図的に無視されていると思います。それを強制的に破壊することは、少なくとも一方的に許されることではありません。
今回の強制排除は、野宿生活者のテントなどが公園内の園灯整備などの工事の支障になるとの理由があげられていますが、当事者らは工事に協力すると表明 していました。実際、園内を移動することによって工事区域に支障のないようにすることは可能と思われますが、そうした話し合いは一方的に拒否されたとのことです。
自立支援センターの機能は、一方で「一時的な代替住居」とされ、テント排除のための受け皿あるいは口実となっていることもひとつの現実です。現場では誠実な努力が払われている例もありますが、就労率が5割などという実態や、事後ケアのない貧弱な支援のもと、野宿に逆戻りする例が絶えないなど、恒久的な野宿生活脱却の手段としては、機能不全を起こしていると言われても仕方のない状態で、それは野宿の当事者たちもいやというほど判ってます。それを唯一の選択肢として、自ら築いてきたテントとそこを仕事の場所とする生活圏そのものの廃棄に同意を迫るようなやり方が「真正な話し合い」と言えるとは到底思われません。
よしんばそこに生活保護を選択肢として加えたところで、自分の住む家を自分で建て、既に仕事をして「自立」しているテント生活者に、行政の世話になることを潔しとしない人がいてもむしろ当然とも思われます。また「市民の苦情」も理由としてあげられますが、長居公園で野宿生活をする人々が一般公園利用者に対して実際に迷惑行為を行ったことは聞きません。むしろ誤った認識に基づく青少年たちの襲撃に晒される野宿生活者らは、一方的に被害者ですらあります。
一般公園利用者にとって、現在の長居公園のテント村のようなごく一部の区域にテントが張られていることによる「占有」の被害はほぼ無視できる程度に小さいと私は思います。それよりも、公園局が工事などを理由に、また野宿者がテントなどを新たに張らないようにフェンスを張って立ち入り出来ないようになっている区域の方がよほど目障りで支障になると思います。
そうした迷惑感情の多くは、実際に野宿生活者と話をしたことも接したこともない一般公園利用者の根拠のない推測、あるいは根深い偏見に基づいていると思われます。野宿生活者が仕事もしていないとか、乱暴で危ない人々であるとかいった一般に信じられていることも、事実とは大きく異なります。「人権都市」を標榜する大阪市にとって、その偏見を是正することこそ、まず為すべきことであるかと私は思います。
公園のテントが排除されることによって、この一見豊かな国において、貧困ゆえに野宿せざるを得ない人々が生み出され続ける問題そのものが解決されるとは思われませんし、むしろその事実を隠蔽することになります。
強制排除はそうした意味でも問題の解決を先送りにし、無視することを意味します。
私は徒に野宿する「権利」を主張するものではありません。ただ同じ街に住む隣人
としての野宿生活者の生活の場が強制的に破壊されることは、私たちそのものも含めた人権の蹂躙に他ならないと感じます。
大阪市は昨年にも靱・大阪城両公園の野宿生活者のテント物件除却のために、職員・ガードマンに大動員をかけて、行政代執行を行いました。その現場に動員された職員の方々が、皆野宿生活者のテント破壊を進んで行ったのではないと信じます。ならば、そのことを命令される現場の職員の方々も酷い立場に置かれていることになります。余程誤った認識を植え付けられていない限り、誰も望んで人の住んでいる場所を破壊しようとは思わないはずです。
野宿の当事者たちの命を危険に晒して得られる公園の美観、それを適正化と呼ぶなら、それは明らかに間違っています。そのような市政を私は望みません。
どうか考え直してください。
一方的な強制排除をやめ、当事者らとの話し合いのテーブルについてください。
解決方法はそのことをまず前提として始まるものだと思います。
(以上)
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芳井 武志
posted by kamapat at 17:42 | 長居公園代執行