私たち釜ヶ崎パトロールの会はこれまで、パトロールや共同炊事の場で「仕事探しに連絡先がいるんだけど」「実はもう年金受け取れるんだけど、住所がないから・・・」といった相談を野宿の仲間から受けた際、メンバーの自宅兼事務所を「一時的な住所の置き場」として提供してきました。
しかし、全国各地の野宿者運動団体が当たり前に行ってきた支援活動の一環であるこの取り組みを、大阪府警は運動つぶしの口実に使おうとしてきました。2004年2月17日早朝、釜パトのメンバー宅に大阪府警の公安刑事十数人が突然踏み込み、「電磁的公正証書原本不実記録同供用幇助」容疑で不当な家宅捜索を行い、逮捕したのです。
前後して、住所を借りていた野宿の仲間たちも任意同行を求められ、長時間の取り調べを受けました。内容は運動の中身や人間関係についてなど、容疑と関係ないものがほとんどだったといいます。
言いがかりの不当逮捕で裁判に持ち込めるわけもなく、逮捕されたメンバーは2日後に釈放されました(のちに不起訴が決定)。
ところが、警察は大阪市北区役所に圧力をかけ、野宿の仲間の住民登録を抹消させようとしてきました。逮捕されたメンバーにも電話を繰り返しかけ、「住所を消したら起訴するのは勘弁してやる」などと脅しをかけてきました。
公安警察の理不尽な脅迫を毅然として拒否するとともに、このままでは住民登録を抹消するとの大阪市からの文書を前にして、私たちは話し合いました。
結論として、じゃあ今住んでいるところに住民票を移させてもらいましょう、ということになりました。そこで扇町公園のテントに住む山内さんが公園への転出届を出したところ、北区役所はこれを却下してきました。大阪市へ却下の取消をもとめる審査請求を申し立てたのですが、何度かの書面のやりとりの末、2004年12月に棄却されてしまいました。
そこで、このまま黙っているわけにはいかないと、私たちは裁判を起こすことにしました。
前置きが長くなりましたが、これが今回の裁判の発端です。
行政はこれまで、失業問題に対してまともな対策を取らず福祉切り捨てを進め、野宿に追いやられる人々を数知れず生み出してきました。そればかりか、生きていくためにテントやダンボールで自らの生活の場を確保してきた野宿者に対しては、「公園適正化」の名のもとに容赦なく追い出しを進めてきています。自立支援センターやシェルターといった「野宿者支援」施策は追い出し・排除の受け皿にすぎず、劣悪な住環境と限られた入所期間ののち、再度路上へと野宿者を放り出すシステムの一環にすぎません。
問題は、直接的な追い出しにかぎりません。工事用フェンスや野宿禁止の看板を張り巡らし、野宿をあらかじめ禁止する。警察や行政や警備員によるひっきりなしの巡回(という名の脅迫)。野宿からの生活保護を認めない福祉事務所。寝ている人に花火を打ち込む、自転車を投げ込むなど、繰り返される襲撃事件。野宿者を食い物にする生活保護ピンハネ業者やケタ落ち病院を放置する行政。
これらの総体が、野宿者に対する社会的排除をかたちづくっていると私たちは考えます。人の命を徐々にすり減らし、削り取り、野垂れ死にへと追い込んでいく点で、荷物を撤去しテントを破壊することにおとらず、暴力的な排除といえるのではないでしょうか。
「住所貸し」に対する弾圧も、野宿(と野宿者支援の)「犯罪化」という排除の文脈で捉えることもできるでしょう。普段からの警察による頻繁な職務質問や嫌がらせは、野宿の仲間なら誰でも経験していることです。
山内さんの裁判は、かれひとりの住民票の問題にとどまらず、見えにくい排除である「住所がないことの不利益」から出発し、野宿者が受けている社会的排除の問題性をあきらかにしていくたたかいであると私たちは考えています。
これまでの経過で、大阪市の態度もまた明らかになってきています。野宿者問題に対する責任は棚上げしたままで、「テントは客観的居住の事実として認められない」と繰り返しているのです。いまも大阪城公園、うつぼ公園、西成公園などで追い出しを進める一方で、山内さんに対し「テントは法令に基づく退去命令の対象となるので、民有地の場合より一層不安定な状態である」などと主張する姿に、その排除への執念を見て取ることができます。
2002年にホームレス特措法が施行されてから3年あまり。いま全国で、野宿者に対する排除の嵐が吹き荒れています。今年1月の名古屋・白川公園での行政代執行による強制排除につづき、9月には蒲郡市が「野宿禁止条例」を可決し、東京都も同様の条例制定を行おうとする動きがあります。
しかし、失業を生み出す社会構造が変わらないかぎり、野宿者は新たに生み出されつづけます。排除は何も解決しないばかりか、路上やテントで生活せざるをえない仲間から生きる手段を奪い、徐々に死へと追いやっていくのみです。
公園での住民登録を勝ち取ることで、行政の動きに歯止めをかけ、野宿者に対しての社会的排除を止めさせていきたいと私たちは考えています。ぜひ、多くのみなさんに注目と支援をよびかけたいと思います。
次回公判
2005年10月14日(金)午後1時30分〜午後3時
大阪地方裁判所1007号法廷
山内さんの証言があります。ぜひ傍聴支援を!
【裁判支援カンパ振込み先」
郵便口座:00930-6-139747(大阪キタ越冬実)
※山内裁判支援とお書きください
【山内さんへの支援の手紙の送り先】
〒530−0025
大阪市北区扇町1の1 扇町公園23号 山内勇志
※これまで、100通をこえる手紙が寄せられています。ありがとうございました!
ホームレスの方々の住む場所ではありません
したがって公園に住民登録するのはおかしいと思いますが?
また、公園を管理している自治体との賃借契約を結んでいるのですか?
勝手にテントを張って占拠するのは不法占拠にあたりませんか?
わきまえてくださいね
それをいうなら、不法占拠は他にもいっぱいあります。
靭公園で行政代執行が行われましたが、あの靭公園の周囲にあるカフェなどは明らかに公園の敷地内にまで、テラスなどがはみ出して増設されていますが、あれは撤去されないのは何故でしょうか?
ヤクザは20年放置、ホームレスには厳しい。結局、弱い者への労りがないんですね。
弱者の立場にならなければ解らないかもしれませんが、この社会は競争社会ですね。
10人でマラソンしても、1位になるのは1人です。でも勝った人があとの9人は負け組と切り捨ててしまうのはおかしい。9人がいるから、1番になれるのです。私や匿名さんが生活できるのも、簡単にいえばこれと同じなんです。
そして、この構図はいつ逆転するかわからないものです。
現在の大阪のホームレスの数を知っていますか?
この1年で潰れた会社の数、リストラにあったお父さん達の数を。
大阪はすでに様々な問題を見直さないといけない時期をもう過ぎているのです。
どんなに鈍感な人でも、老後になったら思い知ることになるでしょうが、それでは遅いのです。
この国の行政は無情です。とくに大阪はひどい。
市民までも優しさが欠如しては、もうおしまいです。