2008/10/11

住民票訴訟、最高裁不当判決

山内さんの住民票訴訟は08年10月3日、上告棄却により判決が確定しました。
不当な差別判決としか言いようがありません。

支援いただいた弁護士のコメント
 「最高裁で1年半以上もかけて、その結果がこれかよ」という感じもしますし、わずかこれだけのことを書くのに1年半もかかったということに、この事件の(最高裁にとっての)重さもまた感じます。
 結局、何も解決されないままに山内さんの事件は終わることになります。

支援いただいた研究者のコメント:
 各紙とも扱いが小さかったですね。ことの重大性に全く気づいていないのでしょう。
 貧困とか言って騒いで、ネットカフェ難民がどうとか騒いでいるのに、住居=住所問題では共通していることに全く気づかず、ホームレスなど別問題ということなのでしょう。

昨07年1月23日に高裁差別判決が出たときに、釜パトの仲間による文章を紹介します。釜パトの通信「前略、路の上より」18号(07年夏号)に掲載したものです。今回08年10月3日の最高裁棄却判決は、ここで批判している高裁判決を全面的に受け入れています。

(以下)

山内さん訴訟、大阪高裁の不当判決next
posted by kamapat at 18:18 | 住民登録裁判

2007/01/23

速報

逆転敗訴の不当判決です。
「われわれの健全な社会通念に沿わない」から。法のもとの平等に反する違憲判決で、意に沿わない者を排除する新自由主義的な判決です。裁判所は社会的排除の場になりました。差別判決であり、くやしいです。
上告します。
法学者の方によれば、法令上は実質的に勝利だとのこと。
posted by kamapat at 12:03 | 住民登録裁判

2006/08/13

住民票裁判報告と支援のお願い(2006/8/13)

扇町公園での住民登録を求める山内さん裁判、今年1月27日に大阪地裁で全面勝訴を勝ち取ったのですが、その後大阪市側は控訴し、現在控訴審に入っています。

大阪市の控訴以後の状況、また高裁での闘いについて、この間お伝えできておりませんでしたので、遅ればせながらご報告と引き続きの支援のお願いです。
 
大阪市が控訴の意思を表明したのは、1月30日。この30日は、西区の靭公園と中央区の大阪城公園で、大阪市が、野宿者のテントを行政代執行という形で強制排除した日です。

判決の出た1月27日の勝訴判決の直後、靭公園の仲間7人と大阪城公園の仲間2人が、それぞれ西区と中央区の区役所を訪れ、住民登録の申請を行いました。テントで住所が認められる、すなわちテントが家であると認められたことを突きつけていくことで、行政代執行の不当性をより明らかにし、これをくい止めよう、という行動です。

しかし、西区と中央区はいずれも「判決を受けての大阪市の方針が決まっていない」などとして、「受理できない」と主張しました。これに対し、預り証を発行させ、区の担当職員に届出用紙を受け取らせましたが、西区、中央区は「あくまで受理ではない」と繰り返し、大阪市は判決が違法であるとした不受理状態を維持したまま3日間をやり過ごし、30日に代執行をすると同時に、控訴の意思を表明し、また後に申請不受理を明らかにするという、許しがたい態度を取ったのです。

大阪高裁での初回の公判は5月26日。この日は、原告である山内勇志さんの意見陳述がなされました。山内さんは、この裁判を起こすきっかけとなった住所貸しに対する弾圧、大阪市による排除と、市が「代替施設」としているシェルターや自立支援センター等の問題点等について述べ、最後に「この裁判は、単に住所の問題のみでなく、野宿者が人間であることを行政に認めさせる裁判だ」、と力強く訴えました。

この日の公判のみで結審するかと思いきや、裁判所は、大阪市側が、地裁判決が引用する行政実例に反論していることについて、その論拠となる他の自治体での実例や、上級庁の意見等の資料を提出するよう、指示してきました。反論が反論となり得ていない大阪市に、再度、チャンスを与えようとするもののようです。

一方で山内さんに対しては、家族関係、稼動状況を示す陳述書を戸籍謄本とともに提出するよう求めてきました。「住所を決めるに当たっては、家族との関係を明らかにする必要がある」などという理由のようですが、本来、住民登録と家族関係は別個のものであり、「家族に面倒見てもらえ」、という福祉の窓口の対応を想起させます。

こちらとしては、一旦、裁判所の問いに答えた上で(山内さんに、現実に扇町以外に「帰る家」はない、ということ)、野宿者に対して家族の住所地を持って野宿者自身の住所地と見なそうとすることの誤りを、主張しました。

2回目の公判は7月14日。大阪市側は、裁判所から出すよう指示されていた大阪市の控訴理由を裏付ける行政実例については何ら示さず、新たに「都市公園は住んではいけない場所であり住所は認められない」との言い分を準備書面で持ち出してきました。

これに対し原告側は、大阪市自らがシェルター設置の際に条例を改正し「住める場所」としていることをもって反論しています。また大阪市側が「法律学者による法解釈」を示したいと主張してきたため、さらに結審は先になりそうです。市側の学者がどのような主張をして来るのか分かりませんが、皆さんのお知恵を拝借しながらこちらもしっかり反論しこの控訴審を闘っていきたいと考えています。

最後になりましたが、皆さんにご協力をお願いしておりました控訴取り下げを求める署名は短い期間にもかかわらず多数お集めいただき、7月11日には1,076筆を大阪市に提出することができました(大阪市側は我々が庁舎に入ることを妨害し「この場所(軒下!)でなら受け取る」などという対応をしてきたので、会議室に入れさせ署名を手渡し受取書を書かせるまで長時間にわたる提出行動となりましたが)。

また、山内さんに全国各地また海外からも寄せられたたくさんの激励の手紙からの抜粋も、公園を住所として山内さんがまさに社会生活を営んでいること、この事実に広範な社会的支持が寄せられていることを示すものとして第2回公判の際、裁判所に提出しました。本当にありがとうございました。

次回公判は9月15日(金)午前10時より大阪高裁別館7階72号で開かれます。引き続き、ご支援よろしくお願いいたします。
posted by kamapat at 20:14 | 住民登録裁判

2006/01/28

山内さん裁判報告(全・勝訴!)/1・30行政代執行阻止行動呼びかけ

(とりあえずコメントは、こちらにどうぞ。)
http://kamapat.seesaa.net/article/12353574.html

扇町公園での住民登録を求める山内さん裁判の判決がきのう、大阪地裁で下されました。

全面勝訴です!

以下、ご報告と、引き続きの支援の呼びかけです。

<当日レポート>

1月27日、朝10時から靱公園現地で行われた靱・大阪城公園のテント強制排除に反対する集会と対市庁デモを大阪・東京・名古屋の仲間たちとともにやり抜き、そのまま大阪地裁10階1007号法廷へと傍聴に押しかけた。30席程度の傍聴席はすぐ満杯になり、他の仲間は廊下で待ち受けるかたちとなった。山内さんは、最前列に座る。

昨年3月の提訴からほぼ1年、発端となった2004年2月の大阪府警による釜パト不当弾圧(仕事探し、年金受給などのために住所が必要な野宿の仲間に自宅アパートの住所の名義を貸していたメンバーがいきなり逮捕され、山内さんを含めた仲間数名も長時間の取り調べを強要された。のち、不起訴)から2年。思いもよらぬ、長丁場の取り組みとなった。

正直、「あまり期待はできないけど、いい負け方ができれば」などと思っていた。
昨今の情勢にくわえ、靱・大阪城の行政代執行手続きの中止を求める要請が地裁に却下されたばかりという状況で、とにかく裁判所の判断はあてにできない、という思いが染み付いていたのだと思う。

着席してから、外の仲間に裁判報告を伝えるための手書きの紙(ドラマとかでよく見るやつ)をつくるのを忘れてたな、と思い、すこし横に座っていたMに声をかける。
「あの『無罪!』とかいうやつ、つくるの忘れてた」「あー、そうだ」と、書きはじめてくれた。
山内さんは、「無罪はちがうだろ!」と笑っている。
見ていると赤マジックででかでかと「不当判決」という書き出しだ。(やっぱ、負けると思ってるのかよ)と苦笑。そのあと「勝訴」というバージョンもでき、なぜか私に手渡される。

そうこうしているうちに、裁判官3名が入廷し、判決がはじまる。

主文
1.被告が原告に対し平成16年4月20日付けでした住民票転居届不受理処分を取り消す。
2.訴訟費用は被告の負担とする。

主文の朗読がはじまると、すかさず永嶋弁護士が「勝った、勝った、勝った!」と小声でつぶやく。
文章をぜんぶ読み終わらないうちに、傍聴席は「やった!」「すごい!」とのどよめきで包まれ、みな立ち上がり拍手の嵐となった。私は、いまだに何が起こっているのか信じられない。

みずからの手で野宿者追い出しを繰り返し、数多くの仲間を路上死に追い込んでおきながら、裁判では「テントはいつでも強制撤去できるのだから、住所としては認められない」という主張を繰り返してきた大阪市の担当職員・弁護士に対し、「ざまーみろ!大阪市!」の野次を飛ばしつつ、「勝訴!」の紙を持ってみなで廊下へなだれこむ。
「どうなったの?」「勝った!」あとは、ひたすら拍手と歓声。
こんなの、ほんと久しぶりだ!

<判決内容について>

今回の判決では、「一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解される」としたうえで、山内さんが扇町公園のテント村を「起居の場として日常生活を営んでいる」ことを認め、全国から寄せられた裁判支援のハガキ・手紙を含む多数の郵便物を受け取っていることも証拠として取り上げられました。

そして山内さんのテントを「占有権限を有するものとは認められないとしても、同所在地は、客観的にみて、原告の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心として、生活の本拠たる実体を具備している」と認め、「法にいう住所とは、生活の本拠を指すものであるから、転居届に住所として記載された場所が客観的に当該届出をする者の生活の本拠たる実態を具備していると認められる限り、市町村長は、当該転居届を受理しなければならない」としました。

さらに踏み込んでいるのは、テントなどの「種類、構造、規模」などは客観的な生活実態を判断するための一資料にすぎず、「設置や撤去が容易な簡易工作物であるからといって、その一事をもって直ちに当該場所が生活の本拠たる実体を欠くことになるものではない」としているところです。
そのうえで山内さんのテントはさまざまな構造物を組み合わせて設置されており、地面に固定されているわけで、「その構造等に照らしても、本件テントの所在地を原告の生活の本拠と認定する妨げとなるものではない」としています。

つまり、山内さんのテントはもとより、もっと簡素な住処でも、そこで実際に生活しているかぎり、住民登録が可能であると読み込めると思います。これは、今後の運動の幅を大きく広げるものです。

占有権限についても、「当該場所について占有権限を有するか否かは、客観的事実としての生活の本拠たる実態の具備とは本来無関係というべき」とし、大阪市の「不法占拠だからダメ」という主張を両断しています。

そしてさいごに、「以上のとおり、本件テントの所在地は法にいう住所と認められるから、被告は同所在地を住所とする本件転居届を受理すべきであり、本件不受理処分は違法といわざるを得ない」と結びます。

振り返ってみると、大阪市が繰り返してきた「テントは客観的居住の事実として認められない」という主張にはやはり無理があったということでしょう。山内さんが実際にそこで居住していることは、誰の目にも明らかであるわけですから(実際、裁判に先立つ審査請求の際には、大阪市職員が直接文書を山内さんのテントに持ってきていたりもしました)。

そのうえで、山内さんと私たちが重ねて主張してきたのは、野宿者が住民として認められないことにより、さまざまな権利を奪われているということです。これは、たんなる不利益にとどまりません。
大阪市は野宿者を「住民・市民」として認めず、むしろ積極的に路上・公園から排除し、劣悪な環境の施設と路上を往還させながら徐々に死に追いやっていっているのであり、このようないわば殺人行政の問題性を撃ち、また失業者・野宿者を不断に生み出しつづけると同時に「自己責任=自業自得」「怠け者」のレッテルを貼り、排除しつづけるこの社会のあり方を糾弾していくたたかいこそ、山内さん裁判の本質なのだと考えます(すべての野宿者が形式的に住民登録を一斉に行えば、野宿者問題が解決するわけではありません)。

こうした私たちの問題意識が判決に反映されなかったのはいささか残念ではありますが、今後の取り組みのなかでさらに形にしていければと考えています。

27日、山内さんの判決を受け、傍聴に来ていた大阪城の仲間2人と靱公園の仲間7人が、ただちに中央区役所・西区役所に向かい、住民登録の申請を行いました(区役所は届けを受け取り、あとは結果待ち)。テントが住所=家であると認められたことにより、仲間のテント・小屋を「ゴミ・モノ」のごとく叩き潰し排除しようとする行政代執行の不当性も、より明らかになったと考えます。
30日早朝の強制排除まで、本当に時間がありませんが、代執行の中止と山内裁判の控訴断念を求め、大阪市への働きかけをお願いしたいと思います。

さいごに、このかん、裁判を支えてくださった方々、激励の手紙やハガキ、エールを送ってくださった方々に、心からの感謝を送ります。ありがとうございました!

<支援要請>

1.大阪市へ、山内さん裁判の控訴断念をもとめる要請を送ってください。
(控訴期限は27日より2週間以内です。このあいだが勝負です)

大阪市長 關 淳一(市長室秘書部秘書課宛)
TEL: 06-6208-7231 FAX: 06-6202-6950
〒530-8201 大阪市北区中之島1-3-20

市長室への意見フォーム
http://www.city.osaka.jp/shichoshitsu/iken/index.html

2.靱・大阪城の強制排除阻止行動

1月30日の早朝より、数百人の職員・ガードマン・警察を動員しての排除がおこなわれる見込みです。当日、両公園への結集を呼びかけます。早朝より公園を完全にフェンスで囲い、密室にしてから職員の大部隊がテントを襲い、一軒ずつ潰していく形になることが予想されます。テント防衛に参加していただける方は、できれば前夜(もしくは始発電車で)から現地に集まってください。
また当日、大阪市の行為をできるだけ多くの人々に監視していただきたいと思います。
朝に間に合わない方や、現場の攻防に参加できない方も、公園周囲に集まっていただければと思います。

3.強制排除が開始されたら、大阪市の各部署に「排除を中止しろ!」と抗議を集中してください。

大阪市長 關 淳一(市長室秘書部秘書課宛)
TEL: 06-6208-7231 FAX: 06-6202-6950
http://www.city.osaka.jp/shichoshitsu/iken/index.html

西部方面公園事務所
TEL: 06-6441-6748 FAX: 06-6441-6797

東部方面公園事務所
TEL: 06-6941-1144 FAX: 06-6943-6877

ゆとりとみどり振興局総務部管理課
TEL:06-6615-0643 
http://www.city.osaka.jp/yutoritomidori/request/index.html

大阪市市民局
http://www.city.osaka.jp/shimin/opinion/01/index.html

世界バラ会議大阪大会実行委
http://www.worldrose-osaka2006.jp/jp/form/index.html
office@worldrose-osaka2006.jp
FAX: 06-6631-8741

第23回全国都市緑化おおさかフェア実行委員会事務局
TEL: 06-6920-5941 FAX: 06-6920-5971
posted by kamapat at 05:56 | TrackBack(3) | 住民登録裁判

2005/10/15

10月14日山内さん裁判公判報告

yamauchi051014.jpg
(終了後、山内さんと永嶋弁護士より報告を受けている様子)

今日の公判は山内さん本人の証人尋問ということで多くの方が傍聴
支援に来てくれ、30席ほどの傍聴席がほぼ満員になりました。
40分ほどの尋問のなかで、山内さんが扇町でどのように生活して
いるか、扇町に住民票を移そうということになった経緯、住民登録
ができないこと・住所がないことの不利益について話し、また大阪
市の野宿者対策が排除を根幹にすえており、自立支援センターやシェ
ルターが「自立」にはほとんど何ら役にたっていないことなども指
摘しました(大阪市は、前回野宿者対策の証拠として自立支援セン
ターのパンフレットを資料に出してきています)。裁判官から生活
の様子、テントの構造などについての質問もありました。

ところで、結審までにあと一回公判があると考えていたのですが、
担当裁判官が異動になるということで、新しく着任する裁判官が判
決を書くか、今回結審にしてこれまでの裁判官で判決を出すかどち
らかにしたいということをいきなり言われました。できればあと一
度やりたかったのですが、山内さんのことを見たこともない裁判官
に判決を出されるよりは・・・ということで、残念ですが今回で結
審ということになりました。来年1月27日の13時15分より大
阪地裁で判決が下されます。それまでに、追加で証拠資料や書面を
提出する予定です。


以下、呼びかけです。
【大阪市による山内さんの扇町公園への転居届不受理を取り消し、
野宿者の住民登録を認める判決を大阪地裁へ要請してください】

〒530-8522 大阪府大阪市北区西天満2-1-10
大阪地方裁判所第二民事部 西川知一郎裁判長
posted by kamapat at 03:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 住民登録裁判

2005/10/12

野宿者に住民登録を!山内さん裁判への注目と支援を呼びかけます

現在、全国で3万人をこえる人々が野宿生活を余儀なくされています。その多くは失業によるものですが、仕事を失い、住む家と暖かい寝床を失った人々にとって、「住所がない」という事実がその苦境に追い討ちをかけています。路上や公園に住みながら、仕事を探すことの困難さはいうまでもありません。生活保護の申請に行っても門前払いされるか、施設への入所を強要される状況がいまだにあります。年金を受給する権利があるにもかかわらず、住所確認ができないことから受け取れずにいる人もいます。これら生存にかかわる問題のほか、選挙権の行使やパスポートの取得、国民健康保険への加入といった市民的諸権利からも野宿者は「住所がない」ことで排除されています。

私たち釜ヶ崎パトロールの会はこれまで、パトロールや共同炊事の場で「仕事探しに連絡先がいるんだけど」「実はもう年金受け取れるんだけど、住所がないから・・・」といった相談を野宿の仲間から受けた際、メンバーの自宅兼事務所を「一時的な住所の置き場」として提供してきました。

しかし、全国各地の野宿者運動団体が当たり前に行ってきた支援活動の一環であるこの取り組みを、大阪府警は運動つぶしの口実に使おうとしてきました。2004年2月17日早朝、釜パトのメンバー宅に大阪府警の公安刑事十数人が突然踏み込み、「電磁的公正証書原本不実記録同供用幇助」容疑で不当な家宅捜索を行い、逮捕したのです。
前後して、住所を借りていた野宿の仲間たちも任意同行を求められ、長時間の取り調べを受けました。内容は運動の中身や人間関係についてなど、容疑と関係ないものがほとんどだったといいます。

言いがかりの不当逮捕で裁判に持ち込めるわけもなく、逮捕されたメンバーは2日後に釈放されました(のちに不起訴が決定)。
ところが、警察は大阪市北区役所に圧力をかけ、野宿の仲間の住民登録を抹消させようとしてきました。逮捕されたメンバーにも電話を繰り返しかけ、「住所を消したら起訴するのは勘弁してやる」などと脅しをかけてきました。

公安警察の理不尽な脅迫を毅然として拒否するとともに、このままでは住民登録を抹消するとの大阪市からの文書を前にして、私たちは話し合いました。

結論として、じゃあ今住んでいるところに住民票を移させてもらいましょう、ということになりました。そこで扇町公園のテントに住む山内さんが公園への転出届を出したところ、北区役所はこれを却下してきました。大阪市へ却下の取消をもとめる審査請求を申し立てたのですが、何度かの書面のやりとりの末、2004年12月に棄却されてしまいました。

そこで、このまま黙っているわけにはいかないと、私たちは裁判を起こすことにしました。
前置きが長くなりましたが、これが今回の裁判の発端です。

行政はこれまで、失業問題に対してまともな対策を取らず福祉切り捨てを進め、野宿に追いやられる人々を数知れず生み出してきました。そればかりか、生きていくためにテントやダンボールで自らの生活の場を確保してきた野宿者に対しては、「公園適正化」の名のもとに容赦なく追い出しを進めてきています。自立支援センターやシェルターといった「野宿者支援」施策は追い出し・排除の受け皿にすぎず、劣悪な住環境と限られた入所期間ののち、再度路上へと野宿者を放り出すシステムの一環にすぎません。

問題は、直接的な追い出しにかぎりません。工事用フェンスや野宿禁止の看板を張り巡らし、野宿をあらかじめ禁止する。警察や行政や警備員によるひっきりなしの巡回(という名の脅迫)。野宿からの生活保護を認めない福祉事務所。寝ている人に花火を打ち込む、自転車を投げ込むなど、繰り返される襲撃事件。野宿者を食い物にする生活保護ピンハネ業者やケタ落ち病院を放置する行政。

これらの総体が、野宿者に対する社会的排除をかたちづくっていると私たちは考えます。人の命を徐々にすり減らし、削り取り、野垂れ死にへと追い込んでいく点で、荷物を撤去しテントを破壊することにおとらず、暴力的な排除といえるのではないでしょうか。

「住所貸し」に対する弾圧も、野宿(と野宿者支援の)「犯罪化」という排除の文脈で捉えることもできるでしょう。普段からの警察による頻繁な職務質問や嫌がらせは、野宿の仲間なら誰でも経験していることです。

山内さんの裁判は、かれひとりの住民票の問題にとどまらず、見えにくい排除である「住所がないことの不利益」から出発し、野宿者が受けている社会的排除の問題性をあきらかにしていくたたかいであると私たちは考えています。

これまでの経過で、大阪市の態度もまた明らかになってきています。野宿者問題に対する責任は棚上げしたままで、「テントは客観的居住の事実として認められない」と繰り返しているのです。いまも大阪城公園、うつぼ公園、西成公園などで追い出しを進める一方で、山内さんに対し「テントは法令に基づく退去命令の対象となるので、民有地の場合より一層不安定な状態である」などと主張する姿に、その排除への執念を見て取ることができます。

2002年にホームレス特措法が施行されてから3年あまり。いま全国で、野宿者に対する排除の嵐が吹き荒れています。今年1月の名古屋・白川公園での行政代執行による強制排除につづき、9月には蒲郡市が「野宿禁止条例」を可決し、東京都も同様の条例制定を行おうとする動きがあります。

しかし、失業を生み出す社会構造が変わらないかぎり、野宿者は新たに生み出されつづけます。排除は何も解決しないばかりか、路上やテントで生活せざるをえない仲間から生きる手段を奪い、徐々に死へと追いやっていくのみです。
公園での住民登録を勝ち取ることで、行政の動きに歯止めをかけ、野宿者に対しての社会的排除を止めさせていきたいと私たちは考えています。ぜひ、多くのみなさんに注目と支援をよびかけたいと思います。


次回公判

2005年10月14日(金)午後1時30分〜午後3時
大阪地方裁判所1007号法廷

山内さんの証言があります。ぜひ傍聴支援を!


【裁判支援カンパ振込み先」
郵便口座:00930-6-139747(大阪キタ越冬実)

※山内裁判支援とお書きください

【山内さんへの支援の手紙の送り先】
〒530−0025
大阪市北区扇町1の1 扇町公園23号 山内勇志

※これまで、100通をこえる手紙が寄せられています。ありがとうございました!
posted by kamapat at 19:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 住民登録裁判
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